「気」の理解

 
 ここからは天丹法の訓練の各段階について少し詳しく記していきましょう。
 仙道をはじめるものは、まず、この世界に満ちている不思議な存在である「気」というものを理解する事からはじめないとなりません。「気」とは、仙道の伝統的な言い方ではこの世界を構成する源であり、全てのエネルギーの根源のものであるといわれているものです。集まれば形を成し、散ずれば虚空に消えるというものですが、こういった言い方では現代人には理解しにくいかもしれません。
 
 例えをあげてみましょう。まず、宇宙空間を思い浮かべてください。宇宙は基本的に真空であり、何も無いように思われているでしょう。しかし、その実、いたるところに星間物質という目に見えない全ての源となるものが広がっているのです。これが何かのキッカケで集まりだすと、星雲という濃密な星間物質が作られます。さらにそれが凝縮すると、星雲のいたるところで星や惑星が形作られます。我々の住む地球もそういった形で出来上がったのです。
 
 この地球上にある全ての物質やそして、我々人間の身体も元はといえば、そういった宇宙に散らばっていた、星間物質というものから出来上がったのです。また、身近なところで見るならば空気は無色透明であり、そこには何もない様に思えますが、空の上で空気に含まれる水蒸気が凝結すれば、目に見える形として雲が現れます。こういった例えのように、気は目に見えなくてもいたるところに存在し、凝集すると形として現れ、その形が終るとまた目に見えないものへと戻っていく性質を持っています。そして、気はこういった有形のものに留まらず、重力などの見えない力や様々な法則を成り立たせている根源のものであるともいわれています。
 
 こういった事柄は実感的にはなかなか理解しにくいでしょうが、本来、「気」という言葉は、この様に、この世界を作り出しているあらゆるものの源となる、とても広大な範囲のものを指す言葉なのです。しかし、ここまで抽象的なものでは、人間では扱いようが無いので、仙道という訓練法ではまず、そのなかでも人間に身近な、人間を構成し生かしている「気」に範囲を狭め、それを扱って訓練をはじめます。これは、いわゆる一般にいう「生気」と呼ばれるものです。これは東洋医学では呼吸と食物の消化により発生し、身体に有る経絡という気の流れ道を通り、体の各種器官を潤し生命の営みの源となるものとされます。
 

人間の身体に有る経絡を示した図の一種。
(「気 流れる身体」に収録されている図)
こういった道を通して気は人体を流れる。
 
 そして、仙道で扱う気には、この生気とは別にもう一つ、この世界の物質を構成しているものから発している、ある種の「情報」というものも、その扱う気の対象の範囲に入るといえるでしょう。我々は普段でも、こういった外界からの特殊な情報ともいうべきものを受け取っているのですが、それらはあまりにも微弱なために我々の通常の意識では認識できないのです。
戻る