コンプレックスの膨張


 先に紹介したコンプレックス、ある一種のエネルギー体ともいえるものは、その原因となった出来事を当人が忘れ去ったと思っても、無意識の内側から、知らず知らず当人の行動や考え方に影響を及ぼし、その人生を変えていくものです。そして、このコンプレックスはその生まれた原因を想起するような場面や事柄に出会った場合に、特に当人の行動や考え方に影響を及ぼします。
 
 例えば、Bという人物はAという人と喧嘩してAの事を嫌いになったとしましょう。BはAが嫌いなあまり、その後、Aの着ている服と同じ服を着ている人や同じ車に乗っている人などまでもが嫌いになってしまうという事があります。また、その反対に、BはCを好きになったとしましょう。Bは、Cが好きなあまり、Cの好きな番組や雑誌までも好きになって自分も読み始めてしまうという事もあります。こういった様に、本来、Bが好きや嫌いになった対象とは違うものまで、その対象との関わりがあったために、それを好きになったり嫌いになったりという事を、よく人は行います。
 
 コンプレックスは、このような形で、その核となる事柄に関係する、他のものごとにまでその対象を膨れあがらせていくという事がよくあるのです。このコンプレックスは良きにせよ悪しきにせよ、人の人格を形成していく元になるものです。そういった意味では、人間が人生を歩んでいく上で、このコンプレックスが無意識に形成されるのは避け得ないものでしょう。そして、人は、このコンプレックスと上手く付き合っていくことで、その人個人独自の人生を歩んでいくのです。
 
 ただ、あまりにもコンプレックスの原因となる情動が当人にとって耐えられないような強いものだったり、またその後の人生でコンプレックスをさらに酷くするような形でその人の人生が発展した場合、それはどんどん膨れ上がって行く事があります。その当人が、まだ社会的に許容される範囲で、そのコンプレックスを扱えるうちは良いのですが、こういったコンプレックスはやがてその当人の心身のバランスを崩し、病的なものへと発展していってしまう事があるので、そういった点には注意が必要です。
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