基礎知識018


マジカル・モットー(Magical Motto)、あるいは魔法名について

 
 GD団では、参入者に入団時に現実世界で使う名前(本名)とは別の「名前」を考えさせ、以後、団内ではその名前を用いる事になっていた。これが、マジカル・モットー(Magical Motto)、あるいは魔法名(Magical Name)と呼ばれるものである。以後もこの伝統は続いており、現代でもGDの伝統を継ぐ団体は、入団者にこのマジカル・モットー及び魔法名をつけさせる事が多い。
 
 厳密に言えば、「マジカル・モットー」と「魔法名」は違うものである。「マジカル・モットー」は自分の霊的学習で目標とするところ、あるいは霊的学習に対する考え方などを主にラテン語を使って標語(モットー)として構築するものである。それに対して「魔法名」という場合は、標語などにとらわれず、好きな単語も用いるなどのもっと広い考え方により作られる名前になる。しかし、結局はマジカル・モットーも名前として用いられるものであり、また現在、基本的にはこれらの差異に関して細かく考えられる事は少ない為、魔術関係で用いる名前はマジカル・モットーも含めて「魔法名」と一括りにして考えられることが多い。ここでも、以後は魔法名として解説していく。
 
 元祖GD団では基本的にはラテン語の文章により、魔法名が作られることが多かった。なかには長い文章になる事もあったため、その場合は文章の単語ごとの頭文字を取って略して呼ばれることになる(短くても略す事もある)。例えば、GD団の創設者の一人であるメイザースは魔法名として「Deo Duce Comite Ferro」というものを採用していたが、この場合「D.D.C.F.」として呼ばれることになった。W・B・イェイツならば「Demon Est Deus Inversus」なので「D.E.D.I.」といった形である。
 
 団内で呼び合う場合は、これに男性の場合は「Frater(読み方としては”フラター”になる。省略形ならばFra。意味は”兄弟”)」、女性の場合ならば「Soror(読み方は”ソロール”。同じくSor.。意味は”姉妹”)」をつける。そして、その前に自分よりも高位階者には尊称をつけることになる。内陣高位階者には「G.H.(Greatly Honoured)」あるいは内陣団員へは「V.H.(Very Honoured)」、外陣高位階者には「H.(Honoured)」をつけて呼ぶ習慣になっていた。例えば、先のメイザースならば「G.H.Fra. D.D.C.F.」といった感じである。また、自分と同位階あるいは自分よりも位階が低い相手でも、高位階を持っているものには、何らかの尊称をつけることもあった。
 
 秘教的な団体や宗教が、新参者にそれまで用いていた本名と違う名前をつけさせる事は世界中の秘教伝統でよく行われる事である。その意味するところは、今までの俗世にまみれた卑俗な「自分」を捨てさせ、団体内では神聖なる意識を持った新しい「自分」として行動させるという考え方から来ているとする事が多い。学徒は、この魔法名を用いる時間、あるいは団の同胞から魔法名で呼ばれる時は、その度にあらためて自分自身を秘教伝統の神聖なる作業に与るものとの認識を深めていくべきであるとされる。やがて、学徒は自分の意識の中に新たな一つの霊的人格を実感することになるのだ。
 
 これはある意味、心理学における「ペルソナ」の考え方を応用したものであるといえる。この為、学徒は心理学のペルソナの考え方も理解しておくべきであろう(当HPでもユング心理学の項で幾らか説明している)。
 現在でも活動している、いずれかのGD系団体などに参入するなどして、この魔法名のシステムを用いる場合、基本的にはその団体のルールに則って名前を考えることになるだろう。しかし、自己参入などでGD伝統系の魔術の学習を志す場合、魔法名は自分で考えてつけることになる。その際に学徒に注意しておいてもらいたい幾つかの点を下に挙げておこう。
 
1 神や天使、悪魔などよく知られている霊的存在や、よく使われる秘教伝統用語を用いた名前にしない。
 
 魔術の学習においては、様々な霊的存在の召喚を行う事になる。例えば、エジプトの「トート神」の召喚はよく行われるものであるが、その際に、学徒が魔法名を「トート」としていると、とてもややこしい儀式になってしまう事は想像できるであろう。また、GD系の伝統では集団で儀式を行うことも多い。その際に儀式でよく呼ばれる霊的存在の名前を、もし学徒が魔法名に用いていたら、学徒は儀式で誰かがその霊的存在を呼ぶ度に、不要な意識の反応を起こすことになるだろう。全ての霊的存在の名前や秘教伝統用語を調べることは難しいかもしれないが、分かる限りにおいて避けるべき努力はしておくことである。
 
2 変な意味を持った言葉になる魔法名は避ける。
 
 一般世間的に考えて変な意味、卑猥な意味の言葉になる魔法名は避けること。また、長い魔法名をつけると単語の頭文字で略して呼ばれることになる。その際にも意図せず変な意味の名前にならないように、よく考えておく事である。
 
3 基本的には変更しない。
 
 魔法名をつける場合、「宣言の儀式」を行うことが多い。この「宣言」とは、秘教的に見た場合、霊的世界にその言葉を「自分」を識別するためのものとして「刻印」するという事になる。心理学的に見ても、一回宣言を行った言葉は自分の無意識に特別な反応を起こすきっかけとなる。こういった反応を起こす「魔法名」を頻繁に変更する事は、様々な意味で避けるべきであろう。また、「マジカル・モットー」として魔法名を考える場合、以後の自分の秘教的学習に、意識的に方向性を強いる事になるので、よく考えて名前をつける事である。ただ、魔法名は一度決めたら絶対に変更不可という訳ではなく、自分の秘教的学習が新たな段階に至った際に、その新たな展望に応じて名前を変更することは特に問題は無いとも言える。GDでも外陣と内陣とでは名前を変えているものもいた。魔法名を決める際は真剣に考えるべきだが、あまり深刻に悩みすぎて全く決められないようになるのも考えものである。
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