アレイスター・クロウリー伝
(当HP的まとめ)


 以上、アレイスター・クロウリーという人物の人生について、駆け足で紹介してきた。冒頭でも触れたが、彼については現在でも人によって全く異なる見方がされているといえるだろう。彼を悪逆非道な人物だという人もいれば、実は優しい人物だという人もいる。ただ、当HP的には学徒には、クロウリーという人物について、彼をそういった一面的に捉えてしまわないように、是非、注意喚起しておきたい。
 
 当HPのユング心理学の項でも説明しているが、人間というものは多面的な存在である。誰しも、人間はその一人の心のうちに様々な悪い面も持っていれば、様々な良い面も持っているものである。例えば、稀代の連続殺人鬼であろうと、何かのきっかけで小さな虫の命を救ってやる事もあるかもしれない。また、どんなに普段は正しい行動を心がけている人物でも、何かのきっかけで過ちを犯してしまうかもしれない。
 
 人間というものは、他人を見る時に、その人物が普段の行動と違った行動を取ると、そのギャップに衝撃を受けやすい。そして「実は、あの人はそうだったんだ」として、そこだけを殊更特別視して、それがその人の実際の人格の全てだと思いやすいものである。上記の例ならば、一匹の虫を助けた殺人鬼を、そこだけをみて「命を大切にする優しい人」だと考えたり、何かで過ちを犯した人を「普段は真面目そうなのに、心の奥は悪い事でいっぱい」と考えたりするようなものである。
 
 クロウリーに対する評価も似たようなものであるといえよう。彼も「人間」であるのだから、悪どい面も持っていれば、善い面もどこかに少しは持っているものである。彼の悪評が大きいために、クロウリーは世紀の大悪人だと思い込んでいた人が、たまにクロウリーが優しい面を出した事もある事を知った場合、そこだけを見て実はクロウリーは優しい良い人だったのだと捉えてしまう事もあるだろう。
 
 しかし、それらの事を踏まえた上でもクロウリーという人物については、これまでのクロウリーの人生紹介を見てくれば解るように、大体において彼の人格はろくでも無いものだったと考えたほうが、ほぼ外してないといえるだろう(苦笑)。
 また、クロウリーが彼の聖守護天使アイワスから「法の書」を授かったことにより、彼を新世代の預言者として「崇拝」する向きもあるが、この点についてもHP作者としては、よく注意を促しておきたい。実際、この「法の書」伝授は、後の我々にとってはクロウリーをクロウリーたらしめた大きな転換点であったといえるのだが、これはまた別の見方をすれば、クロウリー自身にとっては、いよいよ社会的な人生の破滅へと導かれた大きな転換点であったとも言えるのだ。なぜならば、この「法の書」伝授により、クロウリーは自分をこそ「新時代の預言者」と考えてしまったことが、彼を社会的に他者と一緒に労働して金を稼いで、まっとうな人間としての人生を歩むという事から目を背けさせてしまった、大きな要因といえるからである。
 
 もちろん、この辺りは異論もあるだろう。彼は社会的な成功には価値を感じていなかったと考える人もいるかもしれない。しかし、彼が老年、自分の長男を溺愛したことや、彼が死の際に残した言葉。そして、死後、彼の衣服のポケットにアブラメリンの大財をもたらす護符が大切そうに入っていたという事から見ても、HP作者には彼自身はそんな聖者や超越者といった存在では無く、どうしようもなく一人の人間だったという事が感じられるのだ。
 
 クロウリーはその人生において、キリスト教を憎みキリスト教に代わる新しい宗教を立ち上げようとしたところから、カウンターカルチャーにおいて(ダーク)ヒーロー的な扱いをされたところもある。特に、自分の周りを取り巻く環境に強い不満を持つ若者が、クロウリーの持つ毒にあてられ、彼の過激な思想の面ばかりに惹かれていくことも多かったようである。
 
 しかし、実際のクロウリーの人生の行動をよく調べてみれば「長いものにはまかれろ」形式の行動が目立ったり、また、自分より力の弱い女にはすぐ暴力に訴える。そして、自分を慕ってくるものには、まずは金を吸い上げる事ばかり考えて、彼をよく知っている弟子にさえ「寄生虫」扱いされたりしているという卑しい人物である事がわかるだろう。こういった点をあえて無視して、クロウリーを教祖や聖者扱いする人については、HP作者としては疑問符を抱かざるを得ない。
 以上、かなりクロウリーについて批判的な事ばかり書いてしまった。その為、学徒はHP作者がクロウリーについて、近づかない方が良いとか、価値が無い人物であると言っているとまで考えてしまうかもしれない。しかし、実際問題として、HP作者が今まで読んで来たクロウリーの著作の内容には、彼が霊的意識を制御する「魔術」にかける情熱が本物であり、また、天才的な才能を持っているという事が見て取れたのも事実である。
 
 よく、世間一般的には、優れた人格を持っている人物こそが、優れた能力を持っているという考え方がある。しかし、過去現代を調べてみれば、ろくでもない人格や人生を送っていても、優れた作品を残した芸術家や有能なスポーツマンが多数いる事は解るであろう。「魔術」についても、それと似たような事が言えるのである。HP作者も、クロウリーの著作については、彼のそういった人格をよく理解した上で、注意して扱えば、多くの益を得ることが出来ると思っている。
 
 その為、これからこのHPでも、クロウリーの魔術体系についてHP作者的にいろいろ考えて、改良とまでいけないにせよ、初心者でも扱いやすいように出来る限り工夫して伝えていこうと予定している。しかし、学徒によっては自分自身でもクロウリーについて学んでいきたいと思うかもしれない。その為、最後に、もし、学徒がクロウリーに興味を持って、自分自身で調べようと思った場合に是非、注意しておいてほしい事を伝えておこう。
 
 それは、彼の全面的なものを無批判に受け入れたり、彼の生き方やスタイルなどを盲目的に信仰したりしないように、よく注意しておいてもらいたいという事である。これはもちろん、魔術という分野全般にも言える事なのだが、クロウリーについては、特にその魔術思想や理論には彼独特の強い毒というものがある事をよく理解しておくべきだろう。
 
 学徒は、それらにアテられないようにするためにも、まずは彼の本だけでなく、様々な観点からの魔術に関する本や資料。また、魔術だけでなく科学的、心理学的な本も読み、そこからクロウリーという人物について客観的・多角的に捉えることが出来るようにしておくべきであろう。
 
 そしてクロウリーの知識を自分なりによく噛み砕いて、常識的な観点を踏まえて良いところは良い、悪いところは悪いと判断出来るようにしてほしい。その上で、それらの知識を、自らを高めるための栄養にするような考え方で学習を進めていけば、クロウリーの体系から多くの益するものが得られる事になるだろう。
 

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