位階構成


 西欧の神秘伝統を伝える団体は、会社組織や軍隊と同様に団体の構成員に段階的な身分(GD団では位階(Grade)と呼んでいた)を与えて、団の活動を行うことが多かった。トップの指示を受けた上位団員は、より下位の団員に具体的な指示を与えて団を動かしていくのである。この方式を取る団体に入団した人は、まずは一番下の段階に位置することになる。それから、様々な教育を受け、試練に受かるなどの要件を満たして順々に次の段階に上がっていくことになるのだ。
 
 そして、GD団でもその方法は踏襲される事になる。元々、GD団の三首領は三人とも「英国薔薇十字協会(SRIA)」という団体に属していた。このSRIAはドイツの「黄金薔薇十字」団の分派として1867年、ロバート・リトルによってイギリスに設立されたとされている。このSRIAは特徴的な位階制を持っており、ほぼ、それに倣う形で下に紹介するような位階制がGD団でも用いられる事になった。

ファースト・オーダー
(第1団、外陣。GD団)

0=0 ニオファイト:Neophyte(初参入者)
1=10 ジェレーター:Zelator(熱心者)
2=9 セオリカス:Theoricus(理論者)
3=8 プラクティカス:Practicus(実践者)
4=7 フィロソファス:Philosophus(哲人)
 
セカンド・オーダー
(第2団、内陣。RRetAC団)

ポータル:Portal(予備門)
5=6 アデプタス・マイナー:Adeptus Minor(小達人)
6=5 アデプタス・メジャー:Adeptus Major(大達人)
7=4 アデプタス・イグセンプタス:Adeptus Exemptus(被免達人)
 
サード・オーダー
(第3団。肉体を捨てた不可視の達人の団)

8=3 マジスター・テンプリ:Magister Tempri(神殿の首領)
9=2 メイガス:Magus(術士)
10=1 イプシシマス:Ipsisimus

 ここからは、上記の位階制度について、少し詳しく説明していこう。GD団に入団するものはまず、ニオファイト参入の為の儀式を受ける。その儀式を無事終えたものは、一番初めの0=0「ニオファイト」という位階へと正式に参入する事になるのだ。ニオファイトとは英語でNeophyteと綴られ、その語源はギリシャ語で「新しく植えられたもの(Newly Planted)」を意味するものだとされている。日本語では「初参入者」と訳されることが多い。ここで入団者はGD団の扱う西欧秘教伝統についての、基本的な知識を学ばされるのだ。
 
 ニオファイトになった団員は、その段階での学習が完了したと判断した場合、その旨を上位団員に伝えるよう指示される。学習が完了した団員には修了試験が課され、それに合格すると、団員はニオファイトの位階を修了し次の位階へと参入する事になる。この位階で知識として教えられる内容は、量も少なく、一部の内容を除くと基本的な事ばかりである。その為、元々、西欧秘教伝統に強い興味と、ある程度以上の知識を持って入団した人は、0=0は短期間で修了してしまう事も多かった模様である。しかし、この段階では、カバラ十字や小五芒星儀式といった重要な儀式を団員は学ぶ事になる。
 ニオファイトを修了した団員は、次に1=10「ジェレーター(あるいはゼラトルとも読まれる)」と呼ばれる位階へ、参入儀式を経て正式に所属することになる。ジェレーターとは英語でZelatorと綴られ、その語源は古代エジプト語のザルアトール「自然の女神アトールを求める者」、あるいは錬金術の熱意ある研究者(ふいごを吹くもの)であると位階参入儀式で述べられる。日本語では「熱心者」と訳されることが多い。
 
 このジェレーター位階からはGD団以外の団体の位階制度には見られない、GD団独自の特徴的な事柄がある。それは、GD団の1=10からの各位階がユダヤの秘教伝統カバラに伝わる「生命の樹」の図形と関係づけられているという事である。「生命の樹」についての詳細は、このサイトでも後に詳しく説明することになるが、とりあえずは下記の画像を見てほしい。
 
grade
 
 上記画像は生命の樹を示す簡単な図形である。この図形の中に丸が10個描かれ、また、その中に1=10や2=9といった形で数字(位階)が書かれているのが見てとれよう。これらが、各位階の割り当てを示している。簡単に説明すると、この図形の一番下部の<マルクト>と呼ばれる丸(セフィラと呼ばれる)が1=10 ジェレーターに該当し、次はその上にあるイェソドと呼ばれるセフィラに2=9 セオリカスが、次は左上へ上がってホドが3=8 プラクティカス、右へ動いてネツァクが4=7 フィロソファスと、以後のセフィラにも順番に位階が割り当てられるのだ。
 
 これらは各位階において学習する事柄が、この「生命の樹」の各セフィラに関係する事柄を基盤にしているという事をも意味する。その為、各位階に昇進した団員は、該当するセフィラに関連付けられた知識を中心に学習していくことになる。例えば、生命の樹の一番下のマルクトと呼ばれるセフィラは<地>に関係が深いため、1=10に昇進した団員は<地>に関係する学習を主に行っていくことになるのだ。ちなみに、0=0ニオファイトは、まだGD団に入団したばかりの人のための予備的な位階であったので、「生命の樹」への割り当ては無いという設定になっている。
 
 ジェレーターの段階も学習内容としては基本的な事が多いため、短期間で修了する団員もよくいた模様である。ジェレーターでの学習を終えた団員は試験に合格すると、次の位階へ昇進する事になる。各位階の昇進の為には試験を経なければいけない事は、以後の位階でも同様である。
 次に、団員が参入する位階は2=9「セオリカス」と呼ばれる位階になる。セオリカスとは英語でTheorycusと綴られる。日本語では「理論者」と訳されることが多い。セオリカスはその割り当てられるセフィラ「イェソド」が<風>に関係が深いため、その学習も<風>に関係する学習を基本として行っていくことになる。
 次に、団員が参入する位階は3=8「プラクティカス」と呼ばれる位階になる。プラクティカスは英語でPracticusと綴られる。日本語では「実践者」と訳されることが多い。プラクティカスはその割り当てられるセフィラ「ホド」が<水>に関係が深いため、その学習も<水>に関係する学習を基本として行っていくことになる。この位階では、最低限、3ヶ月間は学習を続けるものである事が、次の位階の参入儀式で言及されている。
 次に、団員が参入する位階は第1団の最後の位階、4=7「フィロソファス」と呼ばれる位階になる。フィロソファスは英語でPhilosophusと綴られる。日本語では「哲人」と訳されることが多い。フィロソファスはその割り当てられるセフィラ「ネツァク」が<火>に関係が深いため、その学習も<火>に関係する学習を基本として行っていくことになる。この位階では、最低限、7ヶ月間は学習を続けるものである事が次の位階の参入儀式で言及されている。
 4=7での学習を終えた団員は第1団(外陣)を卒業し、次の第2団(内陣)へと参入する事になる。先にも紹介したが、この達人のための<RRetAC>団は元祖GD団発足後、数年たってからメイザースによって大改造されて実質的な活動がはじまった団である。その為、団の位階構成もいろいろ複雑なことになっている。
 
 まず、団員は実際に「達人」になる前に予備的な位階としてポータル(予備門)という段階に参入しなければならない。このポータルという段階は元々、初期の元祖GD団では存在せず、メイザースの大改造によって新しく作られた段階であった。その為、生命の樹上でも割り当てるセフィラが無いため、ティファレトへ入る前の「幕(パロケト)」に該当する段階とされることになった(位階参入儀式では、ある意味ではイェソドに属しているとも言われる)。
 
 ポータルはその目的として、達人たちで構成される第2団へ参入する団員に「達人になる」ためにふさわしい学習を行わせる為の期間であるとされる。ポータルの参入儀式を経た後、団員は最低9ヶ月間はこの段階で学習を行うことになるのだ。この9ヶ月間という期間は、太陰暦において胎児が胎内にいる期間を模しているとされている。団員は、ここで象徴的に新しく生まれ変わり、第2団へと参入するとされるのだ。
 そしてポータルの期間を終えたものは、5=6以上の「達人」によって構成される第2団<RRetAC>団に正式に入団。5=6「アデプタス・マイナー」と呼ばれる位階に位置する事になる。アデプタス・マイナーは英語でAdeptus Minorと記され、日本語では「小達人」と訳されることが多い。5=6 アデプタス・マイナーの割り当てられるセフィラは「ティファレト」とされる。今までの第1団を団員が学習の為の期間、「徒弟」の期間とすると、この第2団は魔術師として一人前になった「職人」の段階とされる。団員は、ここで自らの「高位の自己」を見つけ、その下、高度な実践魔術を行うことが求められるのだ。
 
 メイザースの大改造は、この5=6の中に更に準位階と呼ばれる段階も作成する事になる。これは、第1団と同様の位階構成を5=6の中に再度用いたものであり、メイザースの計画では、ジェレーター・アデプタス・マイナー(Z.A.M.)からはじまって、セオリカス・アデプタス・マイナー(Th.A.M.)、プラクティカス・アデプタス・マイナー(P.A.M.)、フィロソファス・アデプタス・マイナー(Ph.A.M.)、そしてアデプト・アデプタス・マイナー(A.A.M.)といった段階が考えられていたらしい。そのうち、最初にZ.A.M.とTh.A.M.で学ぶ項目が実際に作成される事になる。また、後にP.A.M.も設定されたが、各段階では厳密な試験が課され、結局、元祖GD団の歴史では、P.A.M.の段階に達したものはいなかった。
 
 その後、GD団伝統を継ぐ団体は、小達人の位階にニオファイト・アデプタス・マイナー(N.A.M.)やPh.A.M.を設定する団体も出てきた。完全に第1団の位階構成が小達人の中で繰り返されることになるのだ。この繰り返しには秘教的な意味があるが、それについては、このHPでもまた後に説明する事になろう。
 第2団の以後の位階、6=5と7=4は元祖GD団では名誉位階としてのみの意味を持つものとなっていた。団の三首領は7=4を持ち、三首領の一人メイザースの妻であるモイナは6=5を持っていたが、実際には6=5や7=4の位階用の知識教義や位階儀式というものは存在しなかったのである。彼らは、元々所属していたSRIAで無意味に高位階を持つもの達が多かったことに嫌気がさしていたのだ。
 
 しかし、元祖GD団が終了した後の、GD団の伝統を受け継ぐ団体の中には6=5や7=4の位階の儀式や知識を考案し、自分はその位階に参入したとする人物が現れる事になる。これは、GD団の用いた位階という「制度」によって生じた、ある意味、大きな弊害とも取れるものだろう。もちろん、中にはそれだけの知識と実力を有したものも存在するかもしれない。しかし、こういった位階制度では自らのプライドを満たすため、あるいは他者を支配したいが為に、意味の無い高位階を名乗るものが、少なからず輩出されてしまったのである。
 そして、第3団は肉体を持ったものは入れない、団を導く「秘密の首領」の属する団体であるとされる。
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